自筆証書遺言の日付けが間違っている場合、その遺言は無効となるのでしょうか?

自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。引用:【民法968条1項】

自筆証書遺言は、日付けの記載がないと上記の方式の違反で無効になってしまいます。

いつ作成されたものなのかハッキリしないと、ほかにも遺言があった場合にどちらを優先すべきか判断できませんし、作成時に遺言能力があったかどうか怪しいケースでも、いつの時点の遺言能力を問題にすればよいのかわからなくなってしまうからです。

では、日付けの記載はあるけれど、それが実際の作成(成立)日とは違うという場合はどうなるでしょうか?

やはり無効になってしまうのでしょうか?

この問題について重要な最高裁判例(最判令和3年1月18日判時2498号50頁)が出てきました。

この事件の遺言者は、入院中に自筆証書遺言の本文を書き上げ、その日の日付けを記入して署名もしたのですが、押印はしませんでした。

その遺言書(「本件遺言書」といいます。)に押印したのは退院してから9日後であり、それは遺言書に記載された日付けの27日後のことでした。

そして遺言者は亡くなり、一部の相続人が、真実と異なる日付けが記載された本件遺言書は無効であるとして、遺言無効確認訴訟を提起しました。


さて、メインテーマについて話を進める前に・・・

自筆証書遺言に記載しなければならないのは何の日付けなのでしょうか?

それは「真実遺言が成立した日」とされています。

では次に、遺言が真実成立する日はいつになるのでしょうか?

これについては、全文を自書した日と考える説もあるようですが、裁判所の見解は、「自筆証書遺言の方式をすべて具備したとき」です。

つまり、全文、作成日付け及び氏名の自書、そして押印までがすべて終わったとき、となります。

したがいまして、上記の事案の場合は、退院後に押印を済ませた日が本件遺言書の成立日ということになり、本件遺言書に記載された日付けは、真実と異なる日付けということになります。


さてさて、やっとメインテーマについてですが、まずは、高裁がどういう判断をしたかを見てみましょう。

高裁は、無効と判断しました。

その理由は、単なる誤記とは認められないし、本当の遺言成立日がいつなのかが本件遺言書の記載その他から容易に判明するともいえないから、というものでした。

実は、やや古い昭和52年の最高裁判例(最判昭和52年11月21日家月30巻4号91頁)に、遺言書に記載された日付けが誤記であること及び真実遺言が成立した日が遺言書の記載その他から容易に判明する場合には、その日付けの誤りは遺言を無効にしない、という判断を示したものがあるので、高裁は、この判例の考えを踏襲しながらもう少し拡大して、上記の場合に当てはまらないのであれば日付けの間違いは遺言を無効にする、という見解をとったものと考えられます。

が、しかし、最高裁は真逆の結論をとりました。

つまり、本件遺言書の日付けの誤りは、本件遺言書を無効にしない(本件遺言書は有効)という結論です。

その理由は、そもそも民法968条1項が日付け等の自書を要するとした趣旨は、遺言者の真意を確保すること等にあるが、必要以上に遺言の方式を厳格に解すると、遺言者の真意の実現を阻害することになってしまう、本件では、遺言者が本件遺言の全文を自書し、その日付けと氏名も自書し、退院から9日後に押印したなどの事実関係なのであるから、日付けの誤りがあるからといって、本件遺言が無効になるとはいえない、というものでした。

たしかに、この事案で遺言が無効とされてしまったら、遺言者は浮かばれないだろうと思いますので、結論としては最高裁の判断が妥当だと私は思います。

が、最高裁の判断基準はあまり明確とはいえませんので、後に出てくる類似事案についての判断は難しくなりそうですね。

遺言者の真意は比較的明らかでも、法定の方式からの逸脱がひどい場合にはきっぱり無効とされるでしょうから、結局はそれらの程度問題です。

退院後1か月以上経ってから押印していたとしたらどうなのか? 遺言書の日付と遺言成立日が半年くらい違ったらどうなのか? 入院していたという事情がない場合も同じなのか?

などなど、類似事案に当たったら、どういう結論になるかハラハラしますね。

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