再転相続があった場合、相続放棄をすることができる熟慮期間3か月はいつから起算されるのでしょうか?

相続人が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、前条第一項の期間は、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。引用:【民法916条】

タイトルのテーマについて、令和元年8月9日に最高裁判例(最二判令1.8.9民集73巻3号293頁)が出ましたので、ご紹介します。


そもそも「再転相続」とは? というところから始めますね。

再転相続とは、Aが死亡し、その相続が開始した後、遺産分割未了のままAの相続人であるBも死亡してしまい、Bの相続人であるCが、AとBの相続人となるケースのことをいいます(広義の再転相続)。

冒頭に引用した民法916条は、この再転相続の場合のうち、BがAの相続の放棄も承認もしないままに亡くなってしまったケースについて、CがAの相続を放棄することができる熟慮期間3か月の起算点を定めたものです。

同条によると、CがAの相続を放棄することができる熟慮期間3か月は、Cが「自己のために相続の開始があったことを知った時」から起算する、ということになるのですが、Cが「自己のために相続の開始があったことを知った時」というのは、Bの相続が開始し、自身がBの相続人であることを知った時のことをいうのでしょうか?

条文上はそのように読むのが自然であるような気がしますが、CがBの死亡と自身がBの相続人であることを知っていたとしても、BがAの相続人になっていたことまでは知らなかった、という場合はどうなのでしょう?


この点が問題になったのが、上記の最高裁判例の事案です。

簡単に事案の概略を説明しますと、Aの債権者(銀行)がAに対して訴訟を提起し、債権者の勝訴判決が確定しました(Aの債務が確定)。その後、Aが死亡し、Aの妻子は相続を放棄しました。

その結果、Aのきょうだい等の合計11名がAの相続人となり、うち9名は相続を放棄したのですが、残り2名(Bともう1名)は、自分がAの相続人となったことを知らず、相続放棄をしませんでした。

その状況のまま今度はBが亡くなり、同人の相続が開始しました。Aの死亡は平成24年6月30日、Bの死亡は同年10月19日のことでした。

そして、平成27年11月11日になって、Bの相続人であるCのもとに、Aの債務をCが相続によって承継したことを前提として、Aの債権者がCの財産に強制執行するための執行文の付与を受けたことがわかる書類(債務名義、承継執行文等)が送達されてきました。

Cは、このときに初めて、自身がAの相続人としての地位を承継してしまっていた事実を知ったのです。


平成28年2月5日、Cは家庭裁判所にAの相続放棄の申述受理の申立てを行い、この申立ては無事に受理されました。

そこで、次にCは、地方裁判所に対し、Aの債務をCが相続により承継したことを前提とする執行文の付与に対する異議の訴えを提起しました。それが本件です。

Aの債権者は、Cの相続放棄は無効である(Cの異議には理由がない)と主張して争い、本件は最高裁までもつれこんだわけです。

※家庭裁判所に相続放棄の申述を受理してもらえたからといって、相続放棄の効力が確定するわけではありませんので、民事訴訟で争いになることがあり得るのです。


さて、上記のような事案で、裁判所はどういう判断を下したでしょうか?

結論から先に言うと、地裁も高裁も最高裁も、Cの相続放棄は有効であると認めました(Aの債権者敗訴)。最高裁の理由づけだけ、以下に簡単に紹介します。

再転相続人であるCは、Bの相続が開始したことを知ったからといって、当然にBがAの相続人であったことを知り得るわけではない。C自身が、BがAの相続人であったことを知らなければ、Aの相続について放棄すべきかどうか選択することはできない。

したがって、民法916条の「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」とは、CがBの相続によりAの相続人としての地位を自己が承継した事実を知った時と解釈する。

まあ、至極当然の結論のように思えませんか?

私は、本件の事案でAの相続に関するCの相続放棄を認めないのはあまりに酷だと思いますので、裁判所の結論は当たり前ではないか、という気がしないでもないのですが、最高裁まで争われたわけですから、決して盤石とはいえない事件だった(結論がどうなるかわからない事件であった)わけです。

それもこれも、民法916条の条文のせいではないかと、個人的には思ってしまいます。前述のとおり、「その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時」というのは、CにおいてBの相続が開始し、自身がBの相続人であることを知った時のことをいう、と読むのが自然(最高裁の条文解釈はちょっと大胆)であるような気がしますので。

実際、地裁と高裁はその点は否定せず、それぞれ別の異なった理由づけでもって最高裁と同じ結論を導いていました。

いずれにせよ、この判例によって、今後の再転相続の熟慮期間に関して疑義がなくなったので、よかったですね。当事者の方は最高裁までもつれ込んで大変だったと思いますが、感謝ですね。

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