遺言にはどのような種類があるのか?
遺言は,自分の財産を誰にどれだけ残したいかという意思を明確にしておく大切なものです。
ただ、遺言については,生前に行われたその意思表示がその人の真意に基づくものであるということを確証できるようにするため,厳格な成立要件が定められています。方式に不備があった場合には,せっかく残した遺言が法的に無効なものになってしまいかねません。
この記事では,遺言の種類とそれぞれのメリット・デメリットについて解説していきます。
普通方式の遺言には自筆証書遺言・秘密証書遺言・公正証書遺言の3種類がある
遺言には,普通方式と特別方式の遺言があり,普通方式の遺言には,「自筆証書遺言」,「公正証書遺言」,「秘密証書遺言」の3種類があります。
特別方式の遺言は滅多にありませんので、ここでは普通方式の遺言3種類について説明します。
ただし、内容が煩雑になるため、どういうものかという概略だけ示し、細かい要件までは記載しません。
「自筆証書遺言」とは,遺言者が遺言書の全文・日付・氏名を自分で書き,押印して作成する方式の遺言です(民法968条1項)。ただし、平成31年1月13日以降は、自筆証書遺言に添付する財産目録については、自書しなくてもよいことになりました。つまり、パソコンで作成した目録を添付したり、不動産登記事項証明書を添付したり、預金通帳の写しを添付することもできるということです。もっとも,財産目録の各頁には必ず署名押印する必要があります(同条2項)。
「公正証書遺言」とは,遺言者が遺言の内容を公証人に伝え,これを公証人が筆記して公正証書により作成する方式の遺言です(民法969条)。対象財産の額に応じた手数料がかかり、証人2名以上の立会いも必要になります。
「秘密証書遺言」は,遺言者が遺言の内容を記載した書面(自筆証書遺言とは異なり,自書である必要はないので,パソコンなどを用いて作成しても,第三者に書いてもらってもかまいません。)に署名押印をし,さらにこれを封印して、公証人及び証人2名の前にその封書を提出して作成されるものです(民法970条)。
それぞれの遺言のメリットとデメリット
自筆証書遺言については、誰にも知られずに簡単に遺言を作成することができ,費用もかからないという点が大きなメリットといえます。
もっとも,方式不備によって無効とされる危険性がありますし,紛失や破損、他者による改ざん、破棄、隠匿といったリスクも高いというデメリットがあります。また、相続開始後には検認(家庭裁判所に遺言書を提出し,相続人等の立会いのもとで遺言書の内容を確認する手続)を経ることも必要になります。
これに対し、公正証書遺言には多くのメリットがあります。
まず,プロである公証人(元裁判官や元検察官など)が関与しますので、方式不備はほとんどあり得ません。
また,原本は公証役場で保管されますので,紛失、破損、改ざん等の心配もありません。
さらに,検認の手続も不要とされています。
デメリットとして挙げられるのは,手続が面倒であること,対象財産の額に応じた手数料がかかること,証人2名の立会いが必要になることです。
秘密証書遺言には、遺言の内容を秘密にしておけるというメリットや,自筆である必要がないというメリットがあります。
もっとも,専門家のチェックを経ない場合には,方式の不備や内容の不備が出てくるおそれがあります。
また,公正証書遺言と違って自分で保管することになるので,紛失、破損、破棄、隠匿のリスクも残ります。さらに、証人2名の立会いと検認も必要になります。
もっとも確実なのは公正証書遺言
このように,3種類それぞれにメリット・デメリットがあるのですが,一番確実なのは公正証書遺言です。
弁護士に依頼してしまえば,面倒な手続は代行してもらえます。証人も実際には自分で用意する必要はなく、公証役場に手配してもらうことも可能です。
上でご紹介したように,自筆証書遺言や秘密証書遺言にはさまざまなリスクがありますので,手数料がかかってしまうデメリットを考慮しても、やはり公正証書遺言を選択することをおすすめしています。
遺言書作成は弁護士にご相談ください
遺言には細かい成立要件があり,専門家のチェックを受けずに済ませてしまうと,無効になったり意図した結果にならなかったりという問題が起こる可能性があります。
遺言の有効性や記載内容の解釈について相続人間で争いが生じてしまうことも少なくはありません。
相続の専門家である弁護士にご依頼いただければ,将来のトラブルをできる限り予防し得る遺言を作成することができます。
遺言書の作成を検討されている方は,ぜひ一度弁護士にご相談ください。